いわゆる「タマ」の部分に違和感を感じた時に考えられる疾患についてお話しします。
精巣をとりまく器官について
精巣(睾丸)は精子を作る機能と、
男性ホルモンを分泌する重要な器官です。
精巣は陰嚢という袋状の器官によって
包まれています。
精巣に帽子のように被さっている器官が
精巣上体です。ここは精子の通り道であり、
精子の運動能力を向上させ、
また貯蔵する重要な役割を担っています。
精巣で作られた精子は精巣上体で成熟し、
精管を通って精嚢や前立腺で分泌される液とともに
精液となり、尿道まで運ばれます。
この精管と、血管(動脈・静脈)、神経、
リンパ管が束になった部分を精索と呼びます。

デリケートな器官です
このように生殖において重要な役割を果たす器官ですので、とてもデリケートで、
以下のようなストレスにさらされて違和感がもたらされることがあります。
長時間座っている(デスクワーク、運転など)ことによる、骨盤底筋の過緊張、血流悪化
免疫力低下により細菌感染を起こし炎症をまねく
精神的ストレスや自律神経の乱れ
近年の異常気象で気圧や気温、湿度などの急激な変化も、自律神経を乱れさせる原因といわれており、
違和感の一因となり得ることがあります。
精巣にまつわる疾患について
違和感を感じて泌尿器科を受診していただくと
尿検査
超音波検査
血液検査
CTやMRI などの検査を行って、症状を確認していきます。
精巣にまつわる疾患
精巣および周辺の器官にまつわる主な疾患は次のようなものがあります。
陰嚢水腫
字の通りになりますが、陰嚢に水がたまる疾患です。痛みはほとんどありませんが、
陰嚢が腫れるので違和感を感じて受診される方が多いです。
穿刺によって水を抜く処置を行うこともありますが、再発の可能性があります。
再発が続くようですと、手術を勧められることがあります。
精巣上体炎
精巣上体が細菌感染で炎症を起こしている疾患になります。
陰嚢が腫れたり、熱をもったり、赤くなったりしますが、片側に起きるのが特徴です。
発熱、悪寒、全身の倦怠感がみられることもあります。原因はさまざまで、
尿路感染からだったり、性感染症からである場合もあります。
いずれにしても感染した細菌を特定し、それに応じた抗菌薬で治療します。
また陰嚢を冷やしたり、安静にすることも症状緩和に効果的と言われます。
精巣炎
こちらも細菌感染で炎症が起きる疾患です。
初期は症状が似ているため、精巣上体炎と区別することが難しいですが
いずれにしても感染した細菌を特定し治療を行っていきます。
※ムンプス精巣炎 ムンプス(おたふくかぜの原因ウイルス)により精巣に炎症が起きます。
耳下腺の腫れ(おたふくかぜ)からだいたい1週間後に20-30%の確率で
精巣炎を発症すると言われています。同じく陰嚢の痛みや腫れ、発熱などの症状がありますが、
片側発症で10%、両側で30%の確率で男性不妊を引き起こす可能性があるため、
早期の受診が求められます。
精索静脈瘤
ほとんどの場合左側に生じ、精巣にしめつけられるような痛みや、鼠径部の痛み、
また、歩くと痛いなどの症状がみられることがあります。精索部分に瘤ができると、
精巣の温度が上昇し男性不妊を引き起こす可能性が高まりますので、早期受診が望まれます。
セルフチェックとしては、陰嚢の腫れはもちろんですが、陰嚢の表面に
血管が浮き出て見える、陰嚢の大きさが左右で異なることもあげられます。
診断後は、手術による根治を目指しますが、
軽症だったり、手術を希望しない場合には薬物治療で経過観察となります。
精巣捻転症
精巣が精索を軸に捻じれて、血流が流れなくなってしまう疾患です。
10代で多く発症が見られ、陰嚢に強い痛みやむくみがあり、
嘔吐や悪寒を伴うこともあります。
捻転を起こしてから6〜10時間以内に治療を行わないと、
精巣が壊死してしまう可能性がでてくるので、
早期発見・早期治療が必要となります。
精巣腫瘍
精巣にできる腫瘍で、20〜30代の若い男性に発症が多く見られる疾患です。
進行が速く、悪性である場合が多いのですが、手術や抗がん剤が有効で、
こちらも早期発見・早期治療が求められます。痛みはあまりなく、
陰嚢の左右の大きさが違うことや、しこりに気がついて受診して
腫瘍が発見されることがありますので、セルフチェックが重要になってきます。
セルフチェックを行いましょう
このようにデリケートな器官です。痛みや違和感を放置せず、
日頃からセルフチェックを行い、
気になることがあれば泌尿器科へご相談ください。


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